連絡がないと落ち着かない。でも、いざ会うと窮屈に感じる。相手を求める気持ちと、離れたい気持ちが同じ人の中で同居することがあります。
ユング心理学の「個性化」という考え方は、この矛盾を発達の途中にあるものとして見せてくれます。
個性化とは、自分の全体に近づいていくこと
個性化とは、意識している自分と、意識していない自分の側面を、少しずつ統合していく過程のことです。目指すのは完璧な人間になることではありません。切り離してきた部分も含めて、自分という全体の形を掴んでいくことです。
これは一生続く過程で、多くの場合、人生の半ばで本格化するとされます。若いころは社会の中で役割を作ることに力を使い、その後、作った役割の外側に置いてきたものと向き合う時期が来る、という見方です。
恋愛は、この過程をいちばん激しく進める
恋愛が個性化の触媒になるのは、相手が鏡になるからです。
一人でいるかぎり、自分の中の甘えたい部分や独占したい部分は、静かに眠っています。ところが特定の相手ができると、それらが一斉に起き上がる。ふだん理性的な人が、恋愛では別人のようになるのはこのためです。
つまり恋愛でみっともなく見える自分は、日常で使っていなかった側面が久しぶりに動いている状態です。これを「弱さ」として封じ込めると、また同じところで詰まります。
依存と自立は、順番に来る
よく「自立してから恋愛しなさい」と言われますが、順番は逆のことが多いです。
依存する時期を通って、依存しても相手が消えなかったという経験を積んで、はじめて安心して離れられるようになる。最初から距離を保っている関係は、成熟して見えて、単に触れていないだけということがあります。
大事なのは、依存の時期に相手を試さないことです。試して確かめた安心は長持ちしません。試すかわりに、求めていることを言葉にする。これが、依存を関係の材料に変えます。
タロットでは「隠者」と「世界」
隠者は、一人で歩き、自分の灯りだけを頼りに進む姿を示します。孤立ではなく、必要な単独の時間です。関係の途中でこのカードが出たときは、離れることではなく、自分の輪郭を確かめる時間を示していると読めます。
世界は、大アルカナの最後に置かれた完成のカードです。ただし完成といっても、欠けがなくなることではありません。全部を含んだ状態、という意味での完成です。個性化が向かう先を、そのまま絵にしたようなカードです。
今日からできること
「相手にしてほしいこと」を3つ書き出してください。そのうえで、それぞれに「これは自分では自分にしてあげられないことか」と問いを立てます。
半分くらいは、自分でできることのはずです。全部を相手に求めていると、相手は必ず足りなくなります。自分で埋められる分を引き取ると、相手に求める1つが、はっきりと伝わる形になります。